(64)クルミ 広報誌2024年7月号掲載

キョンナ(去年)の秋は拾ったりもらったりでクルミがイッペーきた。もちろんカラに肉がついているやつ。それをコヤシブクロに入れてホンナゲテおき、肉をくさらせる。腐ったら水洗いしてきれいにする。イモグルマですると楽らしいが、ないので一斗缶に入れ、棒の先に横木を十文字につけたのを作り、カンモシて腐ったのを洗い流す。何度かしてきれいになったら天日で乾かす。カラスに注意。乾いたら空米袋に入れてしまっておく。トレ秋はいそがしくて、それ以上かんまっていられない。

クルミは日本在来という。そこらじゅうに生いてる。しけた土地を好むようだ。標準名オニグルミ。ヒメクルミもあるそうだがあまり見かけない。カシックルミというのは外来種らしい。カラが柔らかい。身は大きいがクセがあってあんまりうまくない。売っているのの大半はこれ。オニグルミのほうが断然うまいと思う。

クルミの画像

冬になって外仕事もなくなる。クルミでもむくか、となる。まず一晩水につける。それをイリナベでクヮラクヮラいる。ピッといってカラのワカレメのスジがほんの少し開く。パカリとは割れない。それをクルミワリという専用器具で半分に割る。それから千枚通しとかキリ、金串、専用クルミほりなどでミをほじくりだす。ミはくねっているのできれいな形でほじくりだすのはチョー困難。ほぼ不可能。一個からでてくるミはほんの少し、はかったら2グラムくらい。カラのボッケからいったら極少量。ハカチがいかないし、肩もこる。ほじくりながらいろいろをかんがえる。どうしても形がくずれる、なんとかそっくりほりだせないか。串の先をあっちからこっちから入れたりひねったり。うまくいかない。だれか機械を発明しないか。……ずっと縄文の昔からヒトはクルミを食ってきたのなら、どうして割ったのか。まさか歯ではあるまい。石などでたたきつぶしたら殻とまじってよくない。とんがったほうを下にしてケツをはたけば開くともいう。焼いて口を開けてもそこにさしこむ鉄の刃はない。黒曜石みたいのでか。ほじるのは竹串か。カラスやリスやネズミはどうして食うのか。クマは食うのか……。

ものごとが進んだという今の世でも、長い時間いろいろ単純な手作業の末、やっと食ゎれるようになるオニグルミ。固いカラで「ミをくるむ」から「クルミ」なのかと思ったりする。

ホジクリだして、ちょっとツマジリグイしてみて、さてどうしよう。まずはアレだ、太巻ずしに入ってるの。砂糖多めと醤油少々に水少量で煮溶かし、アーブクがたってきたらクルミを入れカンモシ火を止める。冷めると固まる。ここの加減はテキトー、くりかえしてためし、好みのができるようにする。できたのをちょびっと焼海苔でまいて箸やすめ、つまみにもいい。干したコーナゴ(小女子)を混ぜ、固めたのもいい。海苔でなまこ形に巻きしめたのを薄く切った菓子「岩月」も売っていた。

次に私はフルーツケーキの具にする。ガッチガチの干柿を刻んだの、レーズン、オレンジビールなどと共にラム酒につけておく。持ち重りがするほど入れてケーキを焼く。美味。

晒に包んだのはクルミ雑巾といった。白木のテーブルの天板をこすればウォルナッツ・オイルステイン仕上げとなる。家のはキハダ。木目を生かした、しぜんなツヤがたまらない、と自分では思う。たくさんでるカラは薪ストーブのたきつけにいい、アブラッ気があってゴーゴー燃える。材はタキモンとしてはB級。心材は家具にいい。

(我田 大、 「季節料理 大」 主人)