冬にイノシシの肉をもらった。スジが多いのでポトフにすることにした。
ポトフはフランス語で火の上の鍋といった意味だそうだ。
ココラに私の愛する「ミソゴタ」がある。季節の野菜やら山菜やら魚やら、あるものを入れミソで味をつけたゴッタ煮。一見ミッタクナイが食うとうまい。ポトフはそのシンルイのようなものだとヒャクショー=板前は直感した。ニホンのレストランや料理研究家が教えるそれとはちがう、もとはヒャクショーのザイゴー料理だと。
それらしきものを手持ちの材料で作る。
肉も野菜もイチドキにゴイソラ入れくずれるをかまわず煮る、というのが本当かと思うが、少し手をかける。まずイノシシ肉を煮る、スジをヤッコクするため。煮ーたったらアクをとり弱火、1時間ほどは煮る。ニンニクや月桂樹(植えてある)の葉も入れる。
そこにいろいろ自家野菜をゴイソラ入れた。
▼ダイコ。耐病総太り。秋にとりカコッテおいたの。
▼ネンジン。黒田五寸。同じく。
▼セロリ。買ってきた。
▼ジャガライモ。メークイン。夏にとりカコッテおいたの。見ると芽がはじまったどころではない、林立してイッソイことになっている。芋はシナブケテ皺がよっている。芽をカイテ、むきづらい皮をむいて入れた。
▼コールラビ。ドイツ語でキャベツ・カブの意。ブロッコリーかケールのような葉の根際の茎がボール状に太る。ふつうのは直径が5センチくらいだが、15センチにもなる種類をつくっている。日持ちする。カコッテある。
▼ルタバガ。スウェーデンカブともいうそうだ。タネを興味本位で買った。九月はじめに蒔いてウルノイデおいたら大きくなった。雪降り前にとってカコッタ。青葉高先生の「日本の野菜」(1983)に詳しい説明があった。明治期に西洋から導入されたが、それより前の江戸後期以前、すでに北海道でアイヌ語ではアタネと、東北地方でセンダイカブといって作られていた。渡来時期や経路は不明。ス入りすることなく春先まで貯蔵でき、冬の重要野菜であったという。新野菜・珍野菜かと思ったらとんでもなかった。ベトを洗い流し、皮をむくとミは黄色くてかたい。煮くずれしない。
▼ポアロー。リーク、リーキ、西洋葱ともいう。長葱のイシクラと同じようにしてつくっている。間隔をあけて太くする。葉っぱはニンニクのよう、丸くない。ネギ臭くないやさしい味。すぐ煮えるのであとで入れた。
▼ブロッコリー、カリフラワーは冬までとっておかれないので入れなかった。キャベツは親類のコールラビがあるのでやめた。
大鍋でことこと煮た。煮えたらニガリ入の塩で味つけ。過ぎないよう細心の注意。黒胡椒をガリガリして味見、と。
ワッ、ぅんめ。なんだこれは。また一口、んめー。・・・・・豚のスネを塩豚にして同じように作る。それもうまいのだが、なんだこれは。塩豚よりもっとコクと旨味がある。なのに澄んだ感じ、すばらしい。大量の自家野菜からのうまみは同じだから、イノシシ肉のせいだろう、きっと。
まったく野生のものはどうしてこんなにスッキリうまいのだろう。ヒトの努力ではおよばない。トリ、ケモノ、魚、山菜みなそう。人間の手下の養殖された肉魚野菜などとてもかなわない。大ゲサに「天然の美」といおうか。いやそんなエラそうではない、もっとさりげない。
(我田 大、六日町伊勢町、「季節料理 大」、主人)
