(71)ハタイモ 広報誌2025年2月号掲載

ハタイモ(サトイモ)はずうっと作っている。畑の定番だ。しかし長らくあんまり上手にはできなかった。雨の多い年はできがいいなと思ったくらい。寒さに弱くてとっておくのも面倒だから、トレ秋に食う分ぐらいとれればいいやと思っていた。ちょっと負け惜しみ。しかし家のは売ってるのとちょっと味がちがった。(来歴不明)ヌルが少なくて、ややポクポク。ドダレ(土垂。品種名)だというが。形もふつうの俵のようでなく尻つぼみ。味もエビイモの血がまじったようなというか、あまい。うまいのには目がないタチなので、このハタイモを何とかジョーズに作れたらいいなと思った。うまくタネイモを冬越しさせるスブ(すべ、術)も見つけていたし。

そこに、栽培上懸案であった水問題解決に曙光が見える出来事があった(ワザコト漢字)。新しい畑を借りたらそこは田っぼへの小さな水路(U字溝でない)のとなりだった。何年かはケナリク見ていた。この水をかけられればいいのになあ、と。ある年、用水権者に思いきってたのんだ。「乾いたとき黒パイプで水をかけさせてくれソー、田っぽにサワルようなことはしないから。」「アー、いいよ。」上流にパイプを長くのばし数十センチの土手を越えて畑に入れた。しかしパイプでの給水は時間がかかって非能率だった。2年ほどでやめた。またたのんだ。ミナクチを作らせてくれと。また、いいよ。ありがたうれしい。畑はハサクに水がたまるようにこしらえた。乾いてイモの葉っぱが垂れてきたらかける。ゴンゴンと水が入るので30分もしないで満水になる。たった2ウネだ。しばらくすると葉っぱがシャキッ。やったやった。

水のほかには、教培法も改良した。連作はしない。ウネは1.5mほどの広い幅にした。軽くケイフンをふってうなったらそのまんなかに溝をつくる。そのカベに50センチおきに芽出ししたイモをたてかけ植える。溝に牛フン、ケイフン、腐ったワラやらアワガラを入れ土を寄せる。芽が出てきて伸びたら土寄せを何度かして大きいうねにする。ソノタッピゴメにケイフンやら化成肥料をオゴル(多めにまく)。脇芽は欠かない。大きい孫イモをめざす。大株に育てる。7月いっぱいくらいで施肥はやめる。ベトが乾いて葉がしおれてきたらたっぷり水を入れる(!)。株元のイモが顔をださないようにちょちょっと土寄せはする。そういうのをアオズッコといった。細く緑でガリガリ。

ハタイモの写真
支柱は1.8mの高さ

セッタケが2m近くなって大きい葉が出ればもう成功は約束されたようなもの。イイゾイイゾ。九月末頃サグリイモ、試し掘り。十月中旬の天気がいい日に掘ってしまう。あとにいろいろトリッコト(収穫作業)が並んで待っている。早めに片づける。それでもデッコイ孫イモがなっていてうれしくなる。やったやった。

さっそく、ニーテ、クー。ンメェー。ハタイモはヤッパ、トリガケがイッチ・ンメェー・ナイ。「煮て食べる。うまい。里芋はやはりとりたてが一番うまいですね。」作って食わない人はなかなかこの味にイキアウことはできない。クチでイッテカセテモわからない。ことばで説明できない境地がある。インターネットやテレビ上をとびかうのはことばと映像だけで、においや味や食感はわからないのに、わからないことをわかった気にさせる。そして、わからないものどうしでわかったような気を持ちあっている。カラダよりアタマ優先のヤな世の中だ。作って食えば一「口」瞭然、カラダがよろこんでいる。

(我田 大、六日町伊勢町、「季節料理 大」、主人)